【津波被害を受けた千葉県旭市の災害ボランティアに参加したS大学3年Y君のレポート】
災害ボランティアは初めてだったので、様々な事を感じる機会となり、自分にとって貴重な体験になりました。
現地到着:現地ボランティアセンターでは、どのくらいの人数を作業する現場に送るべきかなどといった割り振りを受付で行い、現場へ送るような体制で行われていました(派遣みたいな形でしょうか?)。
また、受付で「ボランティアをするに当たっての心得」や「これから向かう現場での主な活動内容」についての説明がされていました。このため、ボランティアに来た人たちはその受付を済ませて、初めて現場へ行くことが出来るといった状況でした。
この時、ボランティアに来ていた人はとても多くて(長蛇の列でした)、受付を済ませるのに約1時間30分程度待つことになりました。このようなことから、はじめは多くの人数を現場へ送り込めば解決するものではないのかと思っていましたが、そうではなくて必要な人数を決めて作業する現場へ送ることが、効率アップや混乱防止等の点で大切だったと思いました。
またボランティアセンターの方で、どの現場でどの団体・グループが作業しているのかを把握しておくことで、何か緊急事態が起きた時に、連絡を取り合うことができるため、受付で行っていたことは大切なことだったと感じました。
バスの中から見た被害状況:ボランティアセンター周辺あたりではあまり津波の影響は見られなかったのですが(気づけなかったかもしれません)、現場に近づくにつれて(海に近づくにつれて)、甚大な被害であることがすぐにわかりました。
バスの中から見た光景では、一見すると家の形を保っているように見えました。しかし、よく見るとほとんど家の中は津波でかき回され、とても人が住める様な場所ではない状況だと思われました。
また、ほぼ半壊していたり、全壊していたりする家もいくつか見られました。このことから、いかに地震・津波が怖いものであるか実感したと同時に、旭市飯岡町は海に近く、地震や津波による影響が大きい町の一つだと感じました。
現場到着と作業開始:作業現場(2階建ての一軒家)は、ほぼ半壊状態でした。
今回は1階のみの作業でしたが、家の中は日常生活で使う物(雑誌,新聞,皿,コップ,ガラスの破片,衣類,布団,)・タンス・畳・木材・貴重品などが泥と一緒にかき回されている状況であり、想像以上に事態の深刻さを目の当たりにしました。
今回の作業は撤去が主な活動でした。まず家に入る前に多くの物が道を塞いでいたため、片っぱしから引きずり出したり、ごみ袋に捨てたりしました。そしてやっと家の奥まで入り、大きい物(タンス,畳,布団など)を外に出していく形で作業をしていきました。この中でもタンスや畳は水を吸収して異常な重さだったので、数人で何とか運ぶという状況でした。
初め20人もメンバ-が居て、ただの一軒家の撤去作業で大げさではないのかと感じた自分は愚か者でした。
今回の撤去作業は約3時間半くらいで終わりましたが、少なくとも20人いないとかなり作業は遅くなっていたと思いました。全員の協力があって作業はスムーズにいきました。
作業終了:撤去作業が終わり、泥をスコップで堀って取り除くといった作業を最後に行ったところ、家の中が徐々にキレイになり驚きました。
初めと比較すると、見違えるくらい広々となり、趣きのある家だったように感じられました。
初めは、「ここは本当に家だったのか?」と目を疑わざるを得ない状況でしたが、作業が終わると「この家は津波が来る前までは、こんなにキレイで、住み心地の良さそうな家だったんだな~。ここで毎日生活していたんだな~」といった気持ちになりました。このような家が地震・津波によってここまで変わってしまうことを想像した時、災害の怖さを改めて実感したと同時に、とても悲しくなりました。「もし自分の家がこのような状況になってしまったら」と考えた時、ショックで立ち直れないかもしれないと思いました。
現在被災者の方は小学校で避難生活を送り、最近はパンやおにぎりではなく、弁当が配給されるようになった様です。少しずつ被災者の日常生活が安定してきたのかもしれないと思われました。しかし、被災者の心理状態というものは、測り知れない程深く、悲しみ・絶望・虚しさ・恐怖・不安・なぜ自分たちの町がこのような被害を受けなければいけないのかという苦痛などが複雑に絡んだ心理・精神状態ではないかと、災害ボランティアを通して切実に感じました。
おわりに:今回は災害ボランティアで、あまり被災者と対話する機会はなかったのですが、もし被災者の方達と対話する機会があった時、今回のボランティアで体験したことを活かすことができるのではないかと感じました。
被災者が住んでいた家の状況を実際に見たり感じたりした上で、被災者の話を聴く場合とそうでない場合では、前者の方がより被災者の立場になって話を聴くことができると思います。少しでも被災者の立場で話を聴くことで、被災者の気持ちをより理解することに繋がると思われました。被災者の気持ちを理解することは難しいですが、それに一歩でも近づくことができた時、被災者の精神的・心理的援助がよりできるのではないかと感じました。
被災者とコミュニケーションをとるにあたって、どのような言葉掛けがより被災者の心に届くのかなどを考えるきっかけになりました。今回の災害ボランティアで得たものを、将来看護師として働く上で活かすことができれば良いなと感じました。