「しんぶん赤旗」 2011年11月22日付
東日本大震災・原発災害の影響で延期されていた被災東北3県のいっせい地方選挙で、最後となる福島県議選が20日投開票され、日本共産党は3議席から5議席に躍進し、県議会第3党となりました。地元紙も「共産は五議席を獲得し、十二年ぶりに交渉会派となる見通し。代表質問の機会を得るほか、代表者会議の構成員ともなる。議会運営に対する発言が強まることは必至だ」(「福島民報」21日付)と報じるなど、党の躍進に注目が集まっています。
(原田浩一朗)
■幅広い人々と共同
福島県民は約200万人。約15万人が、いまも住みなれたわが家を離れているという状況での選挙となりました。
原発に対する県民の意識は、3月11日を境に激変。怒りの矛先は、「安全神話」をふりまいて、原発事故をひきおこした東京電力と、長年にわたり国策として原発を推進してきた国に向けられています。
10月の県議会で「県内にある10基の原子炉全てを廃炉にすることを求める請願」が、全会一致で採択された(東北電力出身の民主党議員や自民、無所属の5人が退席)のは、その象徴です。
10月30日に福島市内で開かれた、「なくせ!原発 ふくしま大集会」に、県内外から1万人を超える人々が集い、「徹底した除染で放射能から子どもたちを守れ」「精神的損害も含め、すべての損害を賠償せよ」「原発はゼロに」とアピールしたことは、「オール福島」の願いを形にし、全国に発信するものになりました。
■「原発マネーと無縁」
日本共産党は、この県議選に7人の候補(推薦を含む)を立て、「『オール福島』の願いをかなえるには、どの党を伸ばせばいいか」と正面から問い、「この願いを込めた一票は、国と東京電力にはっきりものがいえる日本共産党の候補者にたくしてほしい」と訴えました。
ほとんどの党派、候補者が放射能の「除染」を訴え、多くが「賠償」を唱えました。
これにたいし、日本共産党は、実際に線量計を持って地域の放射線量を計り、それをマップにして住民に届けるだけでなく、市や県、国にも働きかけ、「行政の責任で詳細に放射線量を測定させ、徹底した除染をさせましょう」と住民に呼びかけました。県民の命と生活を守る献身的な党の姿に共感がよせられました。
また、巨額になる除染と賠償費用をどう捻出するかという財源問題では、原発を推進してきた東京電力など電力会社、原発で大もうけしてきた大企業に応分の負担を求めることを有権者に訴えました。
「さすがは『原発マネー』に無縁な党ですね」と新鮮な共感が広がり、「今度は共産党」という人が、これまで保守的な立場だった人や、従来の政党支持の枠を超えて広がり、5人当選の力となりました。
■矛盾をかかえた他党
他党の議席は、自民党が改選前を1議席上回る27議席となりましたが、目標としていた過半数の30議席には届かず、民主党は15議席で改選時から1議席減らしました。「数的には1減だが、県連三役のうち、2人が落選の惨敗」(民主県連関係者)でした。
公明党は、3議席を維持、社民党は2議席から1議席に後退し、みんなの党は県議会初の1議席を得ました。
県民の意識の激変に押されて原発政策を転換した各党県連と、国政では転換できていない各党本部との間には深刻な矛盾が生まれました。
政権与党で県知事与党の民主党と、県議会最大会派の自民党の「二大政党」が、そろって党本部の応援弁士を要請しなかった事にもあらわれました。
公明党の山口那津男代表、井上義久幹事長が応援に来ましたが、2年前に政権交代するまで、10年間にわたって、自民党と連立政権を組み、原発を推進してきたことには頬かむりしました。